<自己資本比率>政府が規制緩和決める 貸し渋り防止

<自己資本比率>政府が規制緩和決める 貸し渋り防止
政府は7日、銀行の健全性を示す自己資本比率の規制を緩和することを決めた。株価などの大幅下落で自己資本比率(貸し出しなど総資産に占める自己資本の割合)が低下し、貸し渋りが起きることを防止するのが狙い。
毎日新聞 2008/11/7

上の記事を読んでどれだけの人が内容を理解できるのでしょう?
これを読んだだけで、どうやって貸し渋りを減らそうとしているかわかる人はそんなに多くないと思われます。
会計に詳しい人とか金融関係者とか。

まあ、発表直後の配信だったので、とりあえず速報的にという記事なのかもしれません。
暫くすると、解説記事も出てくるでしょう。

とりあえず、大事な政策には間違いないので、何とかまとめてみました。
正確な議論は難しいので、大雑把に説明します。

というか、正確な説明は私の能力を超えています。
一応自分の中ではストーリーはつながったのですが、正しいことを書いているかどうかは自分でもちょっと疑問です。

概略

政府が貸し渋り対策として銀行の自己資本比率の算出方を一時的に変更しようと検討しています。

そもそも、自己資本比率とは何なのでしょうか?
計算方法を変えるだけで、どうして貸し渋りが減るのでしょうか?

自己資本比率とは何か

まず、自己資本比率とは何なのでしょうか。
そこから、スタートしたいと思います。

具体的に考えるために、Aという会社があるとしましょう。
この会社は、10億円の普通預金と10億円分の株と10億円分の工場(土地・建物・設備)を持っていたとします。

つまり、A社は合計すると30億円分の価値のある物をもっています。
こういったものを資産といいます。

逆に、A社は15億円の借金をしているとしましょう。
借金のように将来返さないといけないお金を負債といいます。

この記事で言っている自己資本というのは、資産から負債を引いた金額です。
式で書くと、次のようになります。

自己資本=資産−負債

資産から負債を引いたものですから、自己資本とは借金を全部返したときにA社に残るものとも言えます。
A社が真に持っているものという言い方でも良いかもしれません。

実際にA社の自己資本を計算してみましょう。
A社は30億円分の資産を持っていて、15億円分の負債があります。
つまり、A社の自己資本は30億円から15億円を引いて15億円であることがわかります。

次に自己資本比率ですが、自己資本比率というのは自己資本を資産で割った金額です。

自己資本比率=自己資本÷資本

自己資本比率が何を表すかというと、A社が持っているもののうち、借金を返したときにA社に残るものの比率を表しています。
例えば、自己資本比率が50%だった場合、借金を全部返すと資産のうち半分が残ります。
自己資本比率が10%だった場合、借金を全部返すと資産のうち10%しか残りません。

つまり、自己資本比率が高い会社は、借金を返したときに残る割合が大きいわけです。
ですから、健全な経営をしている会社といえます。

逆に、自己資本比率が低い会社は、借金を返してしまうとあまり残るものが無いわけです。
経営的に不安がある会社ということが言えるわけです。

A社の場合、30億円の資産があって、自己資本が15億円ですから、自己資本比率は50%となります。

株価と自己資本比率

さて、株式の価格と自己資本比率の間にどのような関係があるのでしょうか?
A社の資産の内訳をみると10億円の株式を持っていることがわかります。

株式市場が下落して、株式の価格が5億円になったとしましょう。
このときの自己資本比率はどうなるでしょうか?

まず、資産が5億円減って25億円になります。
負債の額は15億円のまま変わりません。

自己資本は25億円から15億円を引いて10億円に減ります。
上の数字を元に計算すると、自己資本比率は40%に減ります(10億円÷25億円=40%)。

このように株価が下がると、株を持っている企業の自己資本比率が下がります。
つまり、経営の健全性が悪くなったと考えられるのです。

銀行に対する自己資本比率の規制

銀行には自己資本比率に対する規制が存在します。
何を規制しているかというと、銀行の自己資本比率を一定以上に保たないといけないと定めているのです。

上で見たように、銀行が持っている株式の価格が下がると銀行の自己資本比率が下がります。
最近の株式市場の下落で、自己資本比率が下がることが予想される銀行が増えてきました。

こうなると銀行としては、自己資本比率を下げない努力、上げる努力をしないといけません。
自己資本比率を下げない、あるいは上げるための手段の一つとして貸し渋りとか貸し剥がしをするのです。

自己資本比率と貸し渋り・貸し剥がし

貸し渋り・貸し剥がしと、銀行の自己資本比率がどう関係するのでしょう?

個人や企業にお金を貸すために、銀行自身も別の所からお金を借りています。
銀行は借りたお金を元手にお金を貸しているのですね。

つまり、借金をしてお金を貸しているのです。
例えば、銀行預金は銀行の立場から見れば、利息を払ってお金を借りているのと同じことです。

また、預金で足りない部分に関しては、日本銀行などからもお金を借りています。

銀行が新たな貸し出しをするために、お金を借りてきたとしましょう。
そうすると、銀行に何が起こるのでしょうか?

まず、お金を借りたわけですから、銀行の負債は増えます。
負債が増えると、自己資本比率も悪くなります。

つまり、銀行が貸し出しをしようとお金を借りると、銀行の自己資本比率が悪くなるのです。

ところが既に見たように、銀行には自己資本比率を下げすぎてはいけないという規制がかかっています。
株価が低迷することにより自己資本が下がってくると、銀行としては外部からの借り入れを増やすことがますます難しくなるのです。

お金をか借りると、自己資本比率がさらに悪くなりますから。

お金が借りられないと、銀行はこれ以上貸し出しをするのが難しくなります。
これが貸し渋りが起こる一つのプロセスです。

貸し剥がしも大体同じ仕組みです。
銀行が貸し出しを減らすと銀行の自己資本比率が上がります。

そうすると、銀行にかかっている規制に引っかからなくなるのです。

今回の金融庁の案は何を目指したのか

今回、金融庁が考えたのは、銀行の自己資本比率の計算ルールを一時的に変えようということです。
従来のルールだと、株価が下がると資産の価格も下がっていました。

そうすると、自己資本比率も下がります。
先ほどのA社の場合だと、株価の下落によって資産が30億円から25億円に減っています。

このルールをゆるくして、株価が下落しても銀行の資産があまり減らないような形で計算しようと金融庁は提案しているのです。

この提案どおりに行くと、株価が下がっても銀行の自己資本比率が大きく下がることはありません。
そうすると、自己資本比率を気にして貸し渋りをしたり貸し剥がしをする必要がなくなるだろうと考えたのです。

はたして目論見通り行くでしょうか?
多分、この政策だけでは不十分でしょう。

現在議論されている政府保証などの政策がセットにならないと、効果は薄いだろうと思います。

2008年11月8日

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