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米雇用者統計では失業率と非農業部門雇用者数が大事


専門家がアメリカの景気を分析するときに、「米雇用者統計」という語を持ち出すことがあります。これはどんなものなのでしょうか。日本でよく使われる、完全失業率とは違うのでしょうか。確認してみましょう。

「失業率」と「非農業部門雇用者数」だけ理解しておけば十分?

株式投資やFXなどをやっていると、「米雇用統計がどうの」という話はよく耳にするでしょう。ちなみに、米雇用統計(Current Employment Statistics、CES ) は米労働統計局(Bureau of Labor Statistics、BLS)による統計です。

実際、米雇用統計は米国の株価や為替に大きな影響があります。為替に影響があるということは、ドル円のレートも変動するということですね。

そして、米国の株式市場は日本株にも大きな影響があります。その意味では、株式投資でも外国為替でも一定の影響(時に、巨大な影響)はあるでしょうね。

日本語の解説は意外と少ない

ところが、色々ネットで調べてみても、米雇用統計の情報ってあまり多くないのです。これには少し驚きました。

もちろん、表面的な解説は、たくさん見つけることができます。でも、詳しく知ろうと思うと、行き詰まってしまうのです。

英語の情報ならたくさんあるんですけどね。日本語のものとなると、表面的なものばかりという印象でした。(丹念に調べれば、詳しいサイトが見つかるのかもしれませんが)

2つだけで十分?

そして、みんな米雇用統計について語っている割には、あまり理解していないのではないかという疑惑も抱いています。と言うのも、テレビなどで米雇用統計を語る人の多くが、2つのキーワードだけで済ませている人が多いようです。

その2つというのが「失業率」と「非農業部門雇用者数」です。資産運用の専門家ヅラをしてテレビなどで偉そうに語っている人でも、この2つだけでおしまいという感じです。

ということは、私たちとしても、特に重要な2点だけで十分かもしれません。 まずは、この2つだけチェックする習慣をつけましょう。

失業率

一般に、アメリカの失業率は、日本よりも高めの数字がでます。だからといって、アメリカのほうが失業してる割合が多いと言えるのでしょうか。

実は、これが、そんなに簡単な話では無いのです。というのも、失業率の定義というのが、国によって微妙に違うからです。

まあ、同じ基準で比べても、アメリカの失業率のほうが高いとは思いますけどね。でも、単純に数字を比べても無意味だということは、覚えておいたほうが良いでしょう。

ちなみに、ネットを漁っていたところ、日米の失業率の比較方法に関する厚生労働省の資料がみつかりました。このドキュメントからわかるように、大枠は同じですが失業の判定基準が日米で大きく違うようです。

例えば、仕事をしていないAさんという人がいたとして、日本の基準だと失業者としてカウントされるのに、アメリカの基準だと失業者にならないという事があるわけですね。あるいは、その逆も。

そして、厚労省の資料にあるように、どう違うのかがはっきりわかっていれば、ある程度の補正は可能です。ただ、正確な数字に近づけようと思っただけで、結構な手間ひまがかかるわけです。

こうしたことは、他国の雇用統計でも言えます。数字だけ見て、日本の失業率は低いと喜んでも意味はありません。

アメリカ国内の失業率の変化を見るのに使う

さて、米雇用統計の失業率は、どう使うのが良いのでしょうか。これは簡単で、過去の同じ国の失業率と比較すれば良いのです。

日本でもそうですよね。失業率を比較するときには、その前月の失業率と比較します。あるいは、前年同期比と言って、1年前の同じ月と比較します。

アメリカでもそれは変わりません。

前月と比べて失業率が下がっていれば、経済政策(主に金融政策)が上手く言っていると判断できます。逆に、失業率が上がっていたら、経済政策に問題がある可能性があります。

失業率が変化すると金利変動し、株価や為替にも影響する

こうした変動があった場合は、FRB によってFFレートの引き下げや引き上げが決定される可能性があります。失業率が上がったら利下げ、失業率が下がったら利下げと考えるのが一般的です。

日本の感覚だと、失業と金利はあまり関係ないという印象を持っている人が多いかもしれません。しかし、金利と失業率には、相関関係があります。

ですから、アメリカでは、雇用の安定化は中央銀行であるFRB の仕事なのです。失業率の変化が、金融政策に直結するわけですね。

そして、金利が変動するということは、株価への影響も考えられるという話になるわけです。一般に、利下げなら株価上昇です。

まあ、このあたりの話は、大枠では日本の完全失業率と同じですね。ただ、日本の場合は、中央銀行である日本銀行は雇用の責任をおっていません。

ですから、失業が増えたら金利が下がると思っている人は、それほど多くないようですけど。でも、第二次安倍内閣以降は、アメリカのやり方に近くなっています。

非農業部門雇用者数

非農業部門雇用者数とうのは、その名の通り、農業部門以外の全ての雇用者数のことです。ちなみに、大和証券のサイトでは、次のように説明されています。

米国では業績に応じてレイオフ(一時帰休)などで人員調整する企業が多いため、景気との連動性が高い指標として重要視されています。

つまり、雇用者数がわかると、景気がある程度わかるということですね。働いている人が多ければ景気がいいというのは、納得しやすい話でしょう。

失業率が減れば雇用者数は増えるんじゃないの?

それでは、失業率と雇用者数の両方に注目する理由は何なのでしょうか。失業率が減れば、雇用者数は増えそうですよね。

実は、必ずしもそんなに単純では無いのです。例えば、失業率上がったり、失業率が変わらないのに、雇用者数が増えるということもありえます。

日本でもアメリカでも、失業者というのは仕事を探している人でなければなりません。例えば専業主婦は、失業者では無いわけです。

ということは、今まで働いていない人が仕事を探し始めたら、失業率が上がる要因になるということですね。仕事を探し始めたということは、失業したとカウントされるからです。

ということは、景気が良くなったと思って仕事を探す人が増えたら、失業率が上がるなんてことも起こりうるわけです。ですから、失業率だけを見ていると、勘違いをする事があるわけですね。

日本だとあまり注目されない雇用者数

ちなみに、この考え方は日本でも同様のはずです。上に挙げたような、景気が良くて雇用者数が増えているのに、失業率が下がる。そんなケースは実際に起こりえます。

そして、実際、雇用者数(日本だと就業者数かな)を持ち出して景気の議論する人もいるようです。

ただ、雇用者数を使って景気判断をするとういのは、日本では少数派のようですね。よりきめ細かい議論ができるので、取り入れない理由はないと思うのですが。

投資家は雇用者数もチェック

株式投資やFXをやっている人なら、雇用者数(就業者数)まで含めて独自の分析をするというのは悪くないと思います。

日本の就業者数は、完全失業率も含まれる労働力調査で分かります。ですから、完全失業率をチェックするときに、一緒にチェックすれば良いでしょう。これは直ぐにできます。

アメリカの雇用者数は、ニュースなどで出てくるのをチェックするのが現実的でしょうか。上にも書きましたが、米雇用統計だと、失業率と非農業部門雇用者数しかでてきません。Google などで検索すれば、日本語のものがすぐに分かるでしょう。


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