個人事業主などが、老後資金を準備しようとしたとします。老後資金の準備に役立つ商品として、まず思い浮かぶのは、iDeCo(確定拠出年金・個人型)でしょう。貯蓄ができる上に、税制上の優遇もあります。
しかし、老後の生活資金に役立つ上に、税制上有利な商品はそれだけではありません。税制上有利という意味では、国民年金基金という商品もかなり有利な商品です。
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個人事業主は老後資金を自分で準備する必要が有る
よく知られているように、個人事業主は公的年金の受給額があまり大きくありません。なぜかというと、個人事業主は厚生年金に入ることが出来ないからです。老齢厚生年金が無い分、年金給付の金額が小さくなるわけですね。
そこで何か別の方法を使って、老後の生活資金を貯めないといけません。公的年金だけでは、生活費として不十分だからです。
そのための方法の一つとして、例えば、生命保険会社の個人年金保険などの金融商品の利用を考える人も多いでしょう。投資信託を使って増やそうとする人もいるかもしれません。
国民年金基金という手もあります
しかし率直に言って、その選択はあまり賢い選択とは言えません。なぜなら、公的な仕組みを使った、もっといい年金制度があるのです。
具体的には、国民年金基金と確定拠出年金(個人型)の2つです。
確定拠出年金(個人型)は、iDeCo とも呼ばれます。iDeCo に関しては別のページで詳しく説明していますし、ご存知の方も多いでしょう。
そこで、このページでは、国民年金基金についてご紹介したいと思います。
基本的には個人年金保険にいている仕組み
国民年金基金は、簡単に言ってしまうと、「生命保険会社の個人年金保険に近い仕組み」です。もう少し細かく書くと、「個人年金保険の終身年金と確定年金を組み合わせたような年金」です。
噛み砕いて説明します
専門用語が多いので、もっと噛み砕いて説明しましょう。
まず、個人年金保険というのは、一定の年齢になった時に年金がもらえる仕組みです。そのために、若いうちに、毎月保険料を払っていきます。1
個人年金保険は、年金の受け取り方によって、「終身年金」と「確定年金」に分けることが出来ます。2
そして、国民年金基金というのは、この個人年金保険に近い商品だということです。ただ、年金の受け取り方が、「終身年金」と「確定年金」を組み合わせたものになっているというわけです。
終身年金とは
「終身年金」というのは、被保険者が亡くなるまで受け取れる年金のことを言います。亡くなるまで毎月○万円のような形で年金がもらえるという感じですね。
ということは、長生きした方がたくさんの年金をもらえて有利ということになります。
確定年金とは
もう一つの「確定年金」というのは、決まった年数は被保険者の生死にかかわらず受け取れる年金です。
例えば、65歳から10年間毎年12万円受給などと決めておくと、被保険者が生きていようが無くなろうと毎年12万円もらえるわけです。つまりこの例だと、総額で、必ず120万円もらえるわけですね。
国民年金基金はこの2つを組み合わせた形
そして国民年金基金は、終身年金と確定年金を組み合わせた形になっているわけですね。つまり、一部の年金は死ぬまでもらえ、残りの部分は年数を決めて受け取ることが出来ます。
国民年金基金の確定年金と終身年金の配分は、加入するプランによって異なります。
生命保険会社で似たような商品があるのに、なぜ国民年金基金が良いのか?
国民年金基金が生保会社の個人年金保険に近い商品なら、なぜ国民年金保険を選ぶ方が良いのでしょうか。同じような商品なら、生保会社の商品を使っても良いはずですよね。
この答えは、とても簡単です。国民年金基金を使った方が有利だからです。
税制上、とても有利
まず、国民年金基金には、税制上の優遇措置があります。個人年金保険にも税制上の優遇はありますが、はっきりいって全くレベルが違うのです。
ですから、国民年金基金が滅茶苦茶有利です。
国民年金基金を使うと、具体的にどの程度の減税になる
もう少し具体的に説明しましょう。
国民年金基金も個人年金保険も、どちらも所得税の控除(所得控除)が使えます。しかし、この所得控除では、国民年金基金のほうが圧倒的に有利なのです。
■ 個人年金保険の場合
まず、個人年金保険の場合は、年間8万円以上の保険料を支払うと、4万円の所得控除が認められます。所得控除が4万円ということは、これに所得税の税率を掛けた分だけ所得税が安くなると考えられます。3
例えば、保険料が月1万円で、所得税の税率が20%だったとしましょう。この場合、年間の保険料は12万円ですから、4万円の所得控除が認められます。
ということは、所得控除の4万円の20%の8,000円分、所得税減税になります。
■ 国民年金基金の場合
一方、国民年金基金の場合は、掛金の全額が所得控除の対象になります。
上の例と同じように、年間の掛金が12万円で、所得税の税率が20%だとしたら、2万4000円分の所得税減税になるのです。
■ 所得控除に関して補足
ちなみに、国民年金基金の所得控除の仕組みは、iDeCo と同じです。この部分に関しては、iDeCo 同様かなり有利なのです。
もう一つ付け加えると、掛金の額が大きくなると、国民年金基金はさらに有利になります。個人年金保険の控除は上限が決まっているので、保険料を増やしても控除の金額は4万円以上にはなりません。
それに対して国民年金基金は保険料を倍にすれば、控除の金額も2倍になります。ということは、所得税の減税額も2倍になるのです。
あ、もう一つ重要なポイントがあります。所得控除が使えるということは、所得税だけでなく住民税も安くなるということです。住民税の税率は10%なので、上の例で行くと、個人年金保険だと4,000円の、国民年金基金だと1万2000円の節税になります。これも結構大きいですね。
予定利率が高い
掛け金(個人年金保険だと保険料)の運用という意味でも、有利なようですね。某サイトによると、国民年金基金の予定利率は1.75%なのだそうです。4
これは、生命保険会社の個人年金保険の予定利率よりもかなり高い数字でしょう。つまり個人年金保険よりも、掛け金に対して給付が多いのです。
掛け金の変更が容易
もう一つメリットがあります。それは、比較的柔軟に掛け金のの変更が出来るという点です。
個人事業主だと収入にばらつきがあるケースも多いですよね。体調不良などで仕事をセーブする時期もあるかもしれません。
そんなときに、簡単に月々の掛け金を変えられるのは大きなメリットと言えるでしょう。
保険料が払えなくて個人年金保険を解約するなんていうのは、珍しくない話です。そういうことが避けられるわけです。
個人年金保険との比較では圧倒的に有利だが
以上のような理由で、個人年金保険との比較では、国民年金基金は圧倒的に有利であると考えられます。利用できる立場にあるのなら、利用しない手はないでしょう。
ただ、確定拠出年金との比較だと、問題はもう少し微妙です。両方とも国による優遇措置があるので、優劣の判断は難しくなりそうです。
私だったら確定拠出年金を選びますけどね。確実性を重視して、国民年金基金を選ぶ人もいるかもしれません。
- 個人年金保険には、保険料を一時払いするタイプもあります。 [↩]
- この他に有期年金というのもあります。 [↩]
- 厳密に言うと、常にこうなるわけではありませんけどね。多くのケースではこのように計算できるとご理解ください。 [↩]
- http://diamond.jp/articles/-/36332 [↩]





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