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税制の仕組を巧みに利用したと言えば聞こえは良いが…【「無税」入門】

マネー本のご紹介です。
どんな本かというと、「副業をして、節税をしよう」という内容の本です。

個人的には興味深く読ませていただきました。
でも、人にすすめられる本かというと、かなり疑問があります。

「無税」入門―私の「無税人生」を完全公開しよう

タイトルにもあるように、「筆者がいかにして税金を払わなかったか」と言うことが書かれています。
具体的に言うと、著者は長期間にわたり、所得税と住民税をゼロにすることに成功しているそうです。

と言っても、難しいテクニックを使っているわけではありません。
自分で事業を起こして、その事業の赤字と給与所得を相殺して所得をゼロにするのです。

所得税の損益通算と言う仕組を利用

ちょっと分かりにくいと思うので、もう少し詳しく解説しましょう。

個人が事業を起した場合、その所得は事業所得と呼ばれます。
一方、会社の給与から発生する所得は、給与所得と呼ばれます。

実際に所得税を計算するときには、この2つは足し合わせてから計算することになっています。
これを損益通算と言います。

例えば、給与所得が300万円あって、事業所得が200万円あったとします。
この場合、所得税の課税対象になる所得は500万円になります。

この500万円を元に、所得税が計算されるわけです。

さて、給与所得はマイナスになる事がありませんが、事業所得はマイナスになる可能性があります。
事業が赤字になるのは、珍しいことではありません。

事業所得が小さくなった場合、その人の所得は給与所得よりは小さくなります。

例えば、給与所得が300万円あって、事業所得が-200万円だったとします。
この場合、所得税の課税対象になる所得は100万円になります。

ここから社会保険料控除だとか配偶者控除などが、さらに引かれます。
結果的に、このケースは所得税の支払いはいらなくなるでしょう。

この本に書かれていることは、基本的にこれだけです。
彼はこの方法を使って、三十数年間所得税と住民税を逃れてきたと自慢しているわけです。

給与と相殺するだけの赤字事業ってちょっと大変

著者はアマチュアのイラストレーターらしく、毎年数十万円の収入があるようです。
それを事業として申告し、費用を収入よりも大きくすることで、結果的に無税になるという仕組みにしています。

でも、この方法って、誰でもできると言うわけではなさそうです。
2つ問題点がありそうです。

まず、常識的に考えると、毎年コンスタントに副収入を得られる人って、限られていますよね。
事業を何もしていないのに事業収入をマイナスにするのはさすがに無理があります。

ですから、著者の言うやり方を実践するには、何らかの経済活動をしないといけません。
著者の場合は、趣味の延長でイラストを売れるから良かったのでしょう。

でも、そうでない人は、どうすれば良いのでしょうか?

例えば、短期間に何か販売業的な事を副業で行うことは可能でしょう。
でも、何年も続けると考えると、ちょっと大変ですよね。

もう一つが、所得税をゼロにするような赤字を事業で出すためには、事業の方はかなりの赤字になる可能性があると言うことです。

自宅をオフィスにして事業を行うとすれば、家賃や水道光熱費などの一部は経費に入れる事ができます。
こういう額を積み上げていけば、年間100万円程度は経費にできるかもしれません。

しかし、所得税を完全にゼロにすることは出来ないでしょう。
ということは、著者はさらに何か余分な支出をしていると考えられます。

イラストレーターと言う仕事を考えると、資料とか機材などが必要なのでしょうか?

当然ですが、こういった出費は家計から持ち出しているはずです。
ですから、無税になるから得とは、単純にいえない気がするのです。

この方の場合は、絵を書くことは趣味だから、それにお金をつぎ込めるのは悪いことではないかもしれません。
でも、一般ではそこまで出来ないですよね。

税金を払わない事を目指すのではなく儲ける事を目指そうよ

この本を読んで一番疑問に思うのは、副業で儲ける事を考えないのはなぜだろうと言う点です。
変な節税テクニックに走るより、よっぽど健全だと思うのですが。

副業で儲けよう。仮に失敗しても税金が安くなるメリットがあるよ。」という主張にした方が、一般には受け入れられそうですよね。
「節税のために副業しよう」では、なんとも後ろ向き過ぎます。

著者は満足しているようですから、それはそれでかまわないのでしょうけどね。

今度こそ税金を払ったに違いない

ところで、この本ですが、そこそこ売れているような感じがします。

amazon.co.jp のレビューでも31件のコメントが付いています。
また、批判的な内容ながら、朝日新聞でも取り上げられたそうです。

どんな内容でも、大新聞の書評で取り上げられれば効果があるはずです。

ということは、著者はこの本の売上に対して所得税をとられた可能性が高い気がします。
「『無税』入門」が原因で税金を払うとしたら、なんとも滑稽な話ですね。

「無税」入門―私の「無税人生」を完全公開しよう


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