配偶者控除の制度変更が議論されていて、社会保険の保険料納付対象者の変更(いわゆる106万円問題)が始まります。その影響で、所得税と社会保険に関する話題が最近多いようです。
でも、その議論には結構間違いがあるようですね。専門家として情報発信をしている人でも間違っていることがあるようです。専門家でも間違えるほど、複雑になってきているという事でしょう。
ただ、ここで紹介する記事は、ちょっと酷すぎますけど。
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大和ネクスト銀行の解説がひどすぎる
ZUU online というところが、106万円の壁について記事にしていました。「10月から変わるパートの働き方『106万円の壁』で気をつけるべきことは?」という記事です。1
2016年10月からは、一部の企業に勤めている人は、106万円以上稼いだ場合は社会保険料の自己負担が発生する事があるという制度変更があります。今までは夫の扶養に入っていたような人も、自己負担が発生するわけですね。
ただこの記事、非常に間違いが多い。酷いものです。プロが書いているとしたら、ちょっと信じられないレベルです。
確かに社会保険やら所得税やらは、プロでも混乱するくらいルールが細かいんですけどね。それにしても、誤りが多すぎるのです。
記事の最後に、「提供:大和ネクスト銀行」とありますから、大和ネクスト銀行の人が書いた文章なのでしょうかねえ。だとしたら、銀行としての信用無くしますよ。
以下、具体的に何が間違っているのか、簡単にチェックしておきましょう。
(ちなみに、106万円の壁に関しては、「厚生年金や健康保険の加入者の範囲が拡大| 夫の扶養に入るのが難しくなった」も参考に)
配偶者控除から外れても配偶者特別控除がある
まず最初は、次の部分が間違っています。
ただ、103万円を超えると税法上の配偶者控除の対象からはずれるため、これまで配偶者控除を受けていた人の所得税の負担が増加する。税率が20%の人の場合、配偶者控除額が38万円なので、「38万円×20%=76,000円」負担が増える。
配偶者控除から外れて所得税の負担が増加するというのは、必ずしも間違ってはいません。でも、配偶者控除から外れると、「配偶者特別控除」というのが使えるんですよね。
この配偶者特別控除を使えば、そんなに大きな負担増にはならないんですよね。ちょっと超えたくらいだと。
今回の記事では、「たとえば、10万円超えてしまった場合」という想定の下で議論しています。給与所得が113万円だったという事ですね。
この場合は配偶者特別控除が31万円あるので、所得税は31万円の20%の6万2000円分安くなるはずです。つまり、配偶者控除がなくなる分の負担増は、上の7万60000円との差額の1万4000円だけなのです。
家計においては、7万6000円の負担増と1万4000円の負担増では、かなり大きな違いですよね。もう、この時点で、解説記事としてていをなしていません。
住民税の事を知らないのか?
次に気になるのが、住民税に対する考慮が抜けている点です。
103万円の壁を超えた場合の自己負担の増加について、記事では次のように説明されています。
これらの壁を越えるとどのような影響があるのだろうか。配偶者控除で考えると、まず、「103万円の壁」については、たとえば、10万円超えてしまった場合、課税されるのは、「10万円×5%=5,000円」にすぎない。
まあ、これ自体は間違っていないのですけどね。でも、実は、100万円付近で住民税もかかるようになるのです。
例えば横浜市の場合、給与所得が100万円を超えると、均等割と言われる市民税が6,200円かかります。2 これに加えて、所得比例割という所得に比例する住民税が10%かかります。控除後の10%だから、1万円ちょっとですね。
つまり、所得が小さい場合は、住民税の負担の方が大きいのです。
確かに住民税は、自治体ごとに微妙に違うので、記述するのも難しいでしょう。でも、全く触れないのは酷すぎるのではないでしょうか。所得税よりもかなり負担が大きいわけですからね。
国民健康保険は社会保険のはずですよね
3つめは、もう少し細かい話です。
これも、まず引用してみましょう。
それに対して、「130万円の壁」あるいは「106万円の壁」はさらに影響が大きい。なぜなら、国民健康保険料や社会保険料を自己負担することになるためだ。
一定の条件を満たす場合、給与が106万円以上の人が社会保険が自己負担になるというのは、確かにその通りです。その部分では、間違った記述ではないのです。
でも、この記述は明らかに間違っている部分があります。
まず「国民健康保険」って、そもそも社会保険なんですよね。ですから、「社会保険料を自己負担」とだけ書いておけば事足りたわけです。完全に余計なのです。
さらに酷いのが、106万円を超えても、国民健康保険は自己負担にならないという点でしょう。
今回の制度変更で対象になる従業員501人以上の企業なら、国民健康保険ではなくて「健康保険」のはずなんですよね。健康保険と国民健康保険は、名前は似ていますが全然別者です。
もう、滅茶苦茶です。
ということで、どうしても健康保険について書きたければ、「国民健康保険料や社会保険料を」ではなく「健康保険と厚生年金の保険料を」とでもすべきでしょう。
細かい話ですから、社会保険の知識が無い人が間違えるのなら、十分に理解できるんですけどね。「大和ネクスト銀行」という名前で書いている以上、ちょっと見過ごすわけにはいきません。
正しい情報を提供しないでその言い草は無いんじゃないですか?
この記事は、次のように結ばれています。
以上のメリット、デメリットを踏まえ、自分の将来設計に合うのはどちらなのか、十分に検討することをおすすめする。
まあ、その通りだとは思うんですけどね。正しい情報を提供しないで、その言い草はちょっとね。
大和ネクスト銀行が大丈夫なのか、ちょっと不安になりました。この人たちが資産運用の相談にのっていると思うとね。
あと、ZUU online のチェック体制にも、不安を抱きたくなります。
専門メディアなら、ちゃんと確認してください。
- 10月から変わるパートの働き方「106万円の壁」で気をつけるべきことは?
ZUU online 2016年10月15日 [↩] - 正確には、均等割は次のようになっています。
均等割
均等割は、地域社会の費用の一部を広く均等に市民の方に負担していただく趣旨で設けられているものです。
市民税 年額 4,400円 県民税 年額 1,800円
(横浜市のホームページより)[↩]
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